●ジョージ・A・ロメロ「死霊のえじき」
George A. Romero 「Day Of The Dead」
の音楽について
●CD1・全28曲・64分、CD2・全6曲・39分
●極私的アルバム評価  
★★★★★
●このアルバムについて 
 筆者(youon)は、公開時にこの作品のLPサントラ1枚組を所有してました。このノリの良い音楽をCDに焼いたり、ウォークマンにダウンロードしたりして聞いていました。かれこれ20年ほどあらゆる手段で聞いていたことになります。

 このたび、2枚組CDが限定発売された(2013年)とのことで、先日(2017年3月)購入しました。そして「死霊のえじき・サントラ」の良さを再確認しました。名盤です。

 CD1枚目は近年発見されたサウンドトラックであるとの記事があったので、そのつもりでしたが、現物のCD1は「サウンドトラック・スコア」とあります。いずれにしても優秀で問題ないです。2013年度作成は確かなようで、ライナーノーツに2013年付けで、ロメロとジョン・ハリソンのコメントが載っています(英文)。

 CD2は曲順は違いますがLPサントラと同じです。短調と長調が交差する各旋律、迫力のリズム、ゾンビの大群をイメージさせる世界観。このたびのCD1の新録音は、CD2のサントラの各要素それぞれをCD2の28曲に色好く散りばめた感じです。

ジョージ・A・ロメロ「ゾンビ」 George A. Romero 「The Living Dead」 映画シリーズについて
 そもそもジョージ・A・ロメロに映画作家としての力量はさほどありません。「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」は素人が作ったような出来だし、ブレイクした「ゾンビ」も技術的に穴だらけ。近年のゾンビ作品もさほどの出来ではありません。では何故、ジョージ・A・ロメロがファンや映画人からリスペクトされるのか。それは、1968年より数十年にわたり注ぎ続けたゾンビへの熱意と、スタンダードのゾンビを作り上げたパイオニアとしての尊厳でしょう。
 そしてロメロの本来の演出力は、スティーブン・キングの脚本の「クリープショー」(82)に垣間見ることができます。

ロメロ作品をリスペクト
したコメディ、
ショーン・オブ・ザ・デッド
 筆者(youon)が初めてゾンビ映画を見たのは、それこそジョージ・A・ロメロの「ゾンビ」であって、作品の稚拙さは認識したものの、映画館からの帰り際、実際に歩いている人が怖いと思ったほど、この作品が怖かったことは確かですね。

 その後、ゾンビものの贋作、亜流、大作、パロディ、コメディなどあらゆるゾンビものが出現しますが、原点はロメロのゾンビ(リビングデッド)であることは間違いないでしょう。

 筆者(youon)が見た、ロメロ以外のゾンビもので、優秀だと思ったのは、2002年製作のイギリス映画、ダニー・ボイル監督の「28日後...」。その続編、2007年製作のイギリス映画、ファン・カルロス・フレスナディージョ監督の「28週後...」ですね。この2作は、”走るゾンビ”で、ロメロ作品のポリシーとは外れますから、感染恐怖の世紀末物映画と捉えた方がよろしいでしょう。

 ゾンビはコメディ、パロディになりやすい題材ですから、多くのコメディがありますが、熱烈なゾンビファンであるサイモン・ペグが脚本、主演した「ショーン・オブ・ザ・デッド」は、ロメロをリスペクトした優秀なコメディでした。
 最近のコメディゾンビものですと、「007/ゴールドフィンガー」のボンドガール、オナー・ブラックマンが出演している「ロンドンゾンビ紀行」(2012年)や、ボーイスカウトの下半身青春コメディの「ゾンビーワールドへようこそ」 (2015年)、イライジャ・ウッドが製作総指揮と主演を務めた「ゾンビスクール!」(2015年)などが面白かったです。

 また、日本では、実質、シリアスなゾンビ映画、佐藤信介監督の「アイアムアヒーロー」(2016年)が優秀でした。韓国の閉鎖したショッピングモールを日本に見立てたロケーションや、リアルなCGは迫力がありました。

 ちなみに「死霊のえじき」のリメイクとされている「デイ・オブ・ザ・デッド」 (2008年)を筆者(youon)は拝見していますが、あえて取り上げません。

●ジョージ・A・ロメロ「ゾンビ」 
George A. Romero 「The Living Dead」 映画シリーズ
 ・オリジナルポスター・日本版ポスター

・ナイト・オブ・ザ・リビングデッド
Night of the Living Dead
製作:1968年 米 監督:ジョージ・A・ロメロ
音楽:ウィリアム・ルース、フレッド・シュタイナー
●極私的感想
 日本未公開、その後の二次メディアで、アメリカの伝説的作品が日本にも伝わった。そもそも映画作品としての出来は良いとは言えないが、死人が歩き回り人を喰らうという設定は、映画史の中で決定的な位置づけを果たした。




・ゾンビ
Dawn of the Dead

製作:1978年 伊・米 監督:ジョージ・A・ロメロ
音楽:ゴブリン、ダリオ・アルジェント
●極私的感想
 日本ではこの「ゾンビ」から始まって、筆者(youon)などは、初めて「リビングデッド」を見て非常に怖かったのを覚えています。
 この後の「クリープショー」などにジョージ・A・ロメロの演出の冴えの一端は見られるが、この「ゾンビ」の怖さは演出ではなくリビングデッドそのものです。映画としては編集の繋ぎが変だったり、まるで自主映画のような作りです。「ゾンビ」はダリオ・アルジェント版119分、米国劇場公開版127分など様々なヴァージョンがある。




・死霊のえじき
Day of the Dead
製作:1985年 米 監督:ジョージ・A・ロメロ
音楽:ジョン・ハリソン
●極私的感想
 ジョージ・A・ロメロの「ゾンビ」シリーズで初めての真っ当な映画作品。ゾンビに意識を持たせたバブ。彼の行動が見る者を泣かせた。ゾンビ狩りのスリル、大量ゾンビ基地流入など、見せ場も大スペクタクル。この作品がシリーズベスト作品かもしれません。
 優秀音楽担当のジョン・ハリソンが、他の映画ではほとんど活動していないのが不思議です(映画音楽家ではないのか?)




・ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 死霊創世紀
Night of the Living Dead
製作:1990年 米 監督:トム・サヴィーニ
製作総指揮:メナハム・ゴーラン、ジョージ・A・ロメロ
音楽:ポール・マックローグ
●極私的感想
 過去作品でメイクアップを担当していたトム・サヴィーニが、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」をジョージ・A・ロメロ製作総指揮のもとリメイク。元があの脚本ですから、そう話を変える訳にも行かず(違う作品になってしまう)、元と同じような気の抜けた出来です。ハッキリ言って。




・ドーン・オブ・ザ・デッド
Dawn of the Dead

製作:2004年 米 監督ザック・スナイダー
音楽:タイラー・ベイツ
●極私的感想
 「ゾンビ」のリメイクで、後の名匠(筆者(youon)は好きではない)ザック・スナイダーの劇場映画デビュー作。アクション・サバイバルものとして優秀で、関連作品の中、この作品が映画としてのレベルが一番高いのではないでしょうか。俳優陣も実力派。走るゾンビがそれこそアクションしています。絶望のラストはなんとかならないかと思う。




・ランド・オブ・ザ・デッド
Land of the Dead
製作:2005年 米、仏、カナダ 監督:ジョージ・A・ロメロ
音楽:ラインホルト・ハイル、ジョニー・クリメック
●極私的感想
 ジョージ・A・ロメロ、20年ぶりのゾンビ映画。ゾンビ世界数年後の人間都市を話の中心に据えた。人間の醜さなどロメロの視点は鈍ってはいないが小さな世界で金銭が流通している設定は疑問に思います。川を渡るゾンビ群など新たな設定は新鮮で、ロメロの演出力も堅持している。シリーズでは上位に来る出来栄え。デニス・ホッパーなど有名俳優も出演。




・ダイアリー・オブ・ザ・デッド
Diary of the Dead

製作:2008年 米 監督:ジョージ・A・ロメロ
音楽:ノーマン・オレンスタイン
●極私的感想
 今作品は、当時、「クローバーフィールド/HAKAISHA」などで流行った手法、主観ビデオ映像によるフェイクドキュメンタリータッチの作品となっていて、それが裏目に出ています。「あのロメロが物まねをするのか?」、「もう演出する力が無いのか?」など思わされます。
 多分、ロメロへのリスペクトで声の出演している大御所たち、ウェス・クレイヴン、スティーヴン・キング、タランティーノ、他多数らも暖簾に腕押し状態。残念な出来です。




・サバイバル・オブ・ザ・デッド
Survival of the Dead

製作:2009年 米 監督:ジョージ・A・ロメロ
音楽:ロバート・カールリ
●極私的感想
 島の2つの一族を話の中心に据え、普通のドラマになる。話は島の中にとどまり、スケール感は無く、原点に戻ったとの見方もできるが、鑑賞者の意識は原点をすでに超えているので、本来はロメロの新しい機軸が必要なのだろうと思う。ドラマ自体に面白みはさして無く、新手のゾンビ退治の仕方のみ浮き出てる。人間の負の因縁のはかなさは表現できたが、普通の出来。




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