●「ダーティハリー」 Dirty Harry 映画シリーズについて

 

●「ダーティハリー」 Dirty Harry 映画シリーズについて

 この記事を書くにあたって「3」と「4」と「5」を録画で見直しました。「1」と「2」は自分の中(筆者youonね)で傑作、秀作として位置づけられていて、すでにあらゆるメディアで何度も見てしっかり頭の中に入ってますが、「3」と「4」と「5」は、多くて数回しか鑑賞しておらず、自分の中では評価がいまいち低い作品です。この度、再見してみて、新たな発見があるかもと思い再鑑賞しました。

 今から思うと「4」以降は、ハリーというキャラに頼らず、映画として完成度の高い作品を作るべきであって、そのターニングポイントとなるべき4作目に名匠イーストウッドが担当してるのが皮肉です。

 「1」で、ハリーが名セリフを吐かせる対象者、黒人銀行強盗犯を演じたアルバート・ポップェルは、「2」「3」「4」に違う役柄で出演している。


●「ダーティハリー」 Dirty Harry 映画シリーズ 

 ・オリジナルポスター    ・日本版ポスター

  

 


・ダーティハリー 
 Dirty Harry

製作:1971年 アメリカ 
監督:ドン・シーゲル
音楽:ラロ・シフリン

●ハリーの掴みのアクション

・ホットドッグを食べながらマグナム発砲。銀行強盗阻止。敵の車横転、消火栓から水が噴き出し、倒れた敵に名セリフ「ディスイズ44マグナム・・」。

●極私的感想
・この第1作目を「アクション映画の金字塔」といった表現をする場合がありますが、正確にはこの映画はアクション映画ではないですよ。クライムサスペンス映画です。アクションとしてはさほど大したことはない。ただ、主役のダーティハリーのキャラが立っていて、それまでのヒーロー像とは違った新時代70年代の新しい主人公像が出来上がったということです。
 ハリーのキャラはイーストウッドが上手く演じてると言うよりか、イーストウッドの持ち味がピッタリはまったと言った方がよろしいでしょう。  

 それと近年の映画『ゾディアック』でも描かれている当時、実際にアメリカで起きた連続無差別殺人事件の社会的背景もこの作品に入れ込んでいる。そういう面では社会派映画という側面もあります。

 熟練のドン・シーゲルの演出はツボを得て、それぞれの見せ場で決めの絵を作ってる。音楽のラロ・シフリンも的確、悪役を見事に演じたアンディ・ロビンソンの評価も高い。
 冒頭のアクションシーンとラストに繰り返す、「ディスイズ44マグナム・・」のハリーのセリフはそれこそ映画史上の金字塔でしょう。

・余談。劇場観賞時、映画後半、ハリーがスタジアムで、”さそり”を拷問し、ヘリカメラが俯瞰で引いていき、画面が暗くなるシーンで、劇場の客が何人かは必ず(筆者youonが見たいくつかの劇場では)席を立って劇場を出てってしまうのです。多分、「犯人が捕まったので」これで映画が終わったと思うのでしょうね。劇場観賞では毎回残念に思っていました。



 ・オリジナルポスター
   ・日本版ポスター


    


・ダーティハリー2
 Magnum Force

製作:1973年 アメリカ 
監督:テッド・ポスト
音楽:ラロ・シフリン

●ハリーの掴みのアクション
・空港で機長に扮し旅客機、陸地操縦。隙を見てハイジャック犯をぶちのめし、客室で仲間のハイジャック犯にマグナム発砲。近場の客に対し「シッダウン!(伏せろ!)」が名セリフか?


●極私的感想
・当時、「続編担当の(パッとしなかった)テッド・ポストは良くやった、頑張った」って言われてました。確かにそのとおりで、「1」で弱かったアクション部分を膨らませ、見せ場の多い娯楽アクション映画に仕上げてます。
 テッド・ポストのフィルモグラフィーを見ると『刑事コロンボ』とかTV作品が多く、映画作品では「奴らを高く吊るせ」とか「続・猿の惑星」などがあり、作品の質から見ても今作「ダーティハリー2」が代表作と言っていいでしょう。テッド・ポスト監督は、2013年8月、95才で亡くなっています。

 1作目に培った、やりすぎキャラ、ダーティハリーをさっさと2作目で逆手に取り、警察内部にやりすぎ組織があり、それとダーティハリーを戦わせました。ハリーのキャラも深まって、話の中心でないギャングとのアクションも魅せている。脚本はこの後、それぞれ監督として活躍する、ジョン・ミリアスとマイケル・チミノです。

 ギャングのアジトに警察隊共々ハリーが乗り込み、ハリーがボスの暴走する車に張り付くカーアクションはイーストウッド自ら演じてるのは見ものです。
 ラストの白バイアクションなど、ところどころぬるい演出(ここは短くカットした方がいいと思われるところ)もあるが、総じて見せ場満載のアクション秀作と言ってよろしいでしょう。



 ・オリジナルポスター    ・日本版ポスター


     


・ダーティハリー3
 The Enforcer

製作:1976年 アメリカ 
監督:ジェームズ・ファーゴ
音楽:ジェリー・フィールディング

●ハリーの掴みのアクション
・スーパーマーケットで強盗発生。車ごと店に突っ込むハリー。マグナム発砲、強盗犯射殺。


●極私的感想
・公開当時、「2」を超えて1作目逼迫した作品と一部で言われはしたが、筆者(youon)は全くそう思いません。「1」や「2」のレベルには達していない普通の刑事バディものでしょう。逆に言えばバディもののはしりの映画とも言えるでしょう。

 特にこれといったアクション見せ場は見当たらず、ジェリー・フィールディングの音楽が見事にコラボレーションした屋根の追跡シーンが音楽の聞かせどころといった感じ。ラストのバズーカ砲も締めの一発に過ぎず、大したアクションにはなっていません。

 女性刑事の相棒が当時としては新鮮で、それが話の中心になっています。
 ただ、相棒の女性刑事はハリーに認められようとするだけで、反発や葛藤はありません。休職させられたハリーが勝手にアルカトラズ島に乗り込むのに何の異議も申し立てずに付いて行き、半ばあっさりと敵の銃弾に当たり死んでしまいます。敵を全滅させ誘拐された市長を救ったとは言え、女性刑事を死なせてしまったハリーの責任は重大だと思うのですが、作品ではそれには全く触れません。

 脚本は、今回初めて知りましたが、スターリング・シリファントとディーン・リーズナー。ディーン・リーズナーについては、筆者(youon)に見識はありませんが、スターリング・シリファントは、『夜の大走査線』でアカデミー脚色賞、『ポセイドンアドベンチャー』や『タワーリング・インフェルノ』のベテランです。筆者の記憶が正しければ、彼は1988年にタイ、バンコクに渡って僧になったと聞いています。1996年4月、78才、バンコクで亡くなっています。



 ・オリジナルポスター    ・日本版ポスター


      


・ダーティハリー4
 Sudden Impact

製作:1983年 アメリカ 
監督:クリント・イーストウッド
音楽:ラロ・シフリン

●ハリーの掴みのアクション
・レストランで強盗発生。裏口からレストランに入るハリー、「俺たちに勝てるかな?」「俺たちだぁ?」と強盗犯。「そうだよスミス&ウエッソンと俺だ!」(このセリフはハズレですね)、そして、マグナム発砲、強盗犯射殺。人質を取る犯人に向かって、「ゴーヘッド、メイク、マイデイ」と名セリフ。このセリフは当たった(当時の社会現象になった)。


●極私的感想
・先に「ゴーヘッド、メイク、マイデイ」の名セリフですが、本国でも奇異な響きを持つらしく、その奇異さが受けて特にアメリカで流行ったみたいですね。その後の他の映画にもこのセリフ、ギャグとして出てきます。
 「Go ahead, Make my day」を直訳すれば、「やれよ、俺の日にしてくれ」ですが、そのまま字幕にすると「???」となりますから、翻訳家は苦労したみたいですね。メディアごとに字幕が違ってたりします。「やれよ。望むところだ」とかね。「やってみな、記念日になるぜ」とか・・。

 さて本編、「ダーティハリー4」ですが、特徴的と言えるのが、クリント・イーストウッド自らの監督作品であるということと、当時、彼の愛人であったソンドラ・ロックの実質主演ということであって、それ以外はオートマグナムの登場ということが目新しいところでしょう。それ以外何があるかと言えば特にありません。

 この当時のイーストウッド監督作品は、前年に『ファイヤーフォックス』と『センチメンタル・アドベンチャー』ですね。う〜ん、特に作家的繋がりは感じられません。自分で監督をやろうとするならば、何かしらやりたいことがあったのではと想像しますが、「オートマグナムをぶっぱなしたかった」ぐらいしか思い当たりません。オートマグナムを片手に夜の逆光で登場するハリーは決めてはいますが、大げさに驚くチンピラなど、話としてはちょっと変です。ここでハリーは。「メイク、マイデイ」と決めセリフをまた言いますが外してます。 

 御大、自らシリーズのほころびを作ってしまった失敗作とまでは言わないが、普通のサスペンス映画でしょう。イーストウッド監督作品としては下位の方でしょうね。



 ・オリジナルポスター    ・日本版ポスター

       


 ・ダーティハリー5
 The Dead Pool

製作:1988年 アメリカ 

監督:バディ・ヴァン・ホーン
音楽:ラロ・シフリン

●ハリーの掴みのアクション
・高速道路下でのカーアクションと銃撃戦。ハリー、マグナム発砲。マシンガンの敵数人が弱すぎ。

●極私的感想
・この作品もアクション映画と言うよりは、サスペンスミステリー映画でしょう。特に見せ場となるアクションシーンは無く、ラストの犯人を捕鯨用の銛で突き刺すぐらいが、お約束の最後の1発。これでシリーズ、順に、44マグナム、爆弾、バズーカ砲、オートマグナム、捕鯨用の銛、と1作ごとに変えているのが分かります。
 話の途中に突然、チャイナタウンのレストランで強盗事件。いつの間にかハリーはレストランの椅子に座っていて、「おみくじを見たか?凶と出たぜ」(外してるセリフ)とマグナムをぶっぱなし強盗退治。中国系相棒のクンフーアクションのおまけつき。

 ミニカーとのカーアクションがそれなりに見せてはいますが、ミニカーですのでカーアクションではなく、ミニカーに仕掛けられた爆弾からどう逃げるかのスリルですね。

 あと、この作品で言えることは、ブレイクする前のリーアム・ニーソンとジム・キャリーが出てることぐらい。ああ、再見してサントラに入ってない曲がいくつかあるのが意外でした。
 申し訳ないですが、シリーズ中、一番見どころの無い作品と言ってしまいましょう。ただ、ダーティハリーのキャラクターは崩れていないので、当時もし、「ダーティハリー6」が出来ていれば喜んで見に行っただろうと思います。