●「ダーティハリー」Dirty Harry シリーズの音楽について・その1

 まあとにかく、待たされましたわ。今でさえシリーズ全ての完全版サントラスコア、ネットで簡単に手に入れられる時代ですが、「ダーティハリー」公開が、1971年ですよ。それで・・それらしきレコードがちょこっと手に入ったのが、何年すか? 「ダーティハリー4」公開後、「5」の前でしたから1986年とかその頃ですよ。それもベスト盤だから「2」なんて1曲しか入ってない。
 あのね、ラロ・シフリンですよ、「燃えよドラゴン」で一世を風靡した、売れない訳がない。なんでこんな変な出し方をしたのか、筆者(youon)は知る由もありませんが、何かしらの理由があったのだろうと推測いたします。
 さて、「おお。やっと出たか!」と思わされたアルバムが下記です。ですから1986年とか、その頃だと思いますよ。当時はCDありませんので、レコードです。


●「ダーティハリー4」ベスト・オブ・ダーティハリー
 SUDDEN IMPACT and the best of Dirty Harry!

 作曲 / Lalo Schifrin ラロ・シフリン Jerry Fielding ジェリー・フィールディング



・上記のジャケットデザインですね。筆者(youon)が購入したのは本国版のようで、日本語のライナーノーツも、そもそも英語でも何の紙も入ってません。ジャケット裏表、隅々まで確認しましたが、どこにも「サントラ」とも「スコア」とも書いていません。裏面に演奏者らしき名称と権利者らしき名称が書いてあるだけです。デカめに写真撮りましたので、クリックで大きくしてご覧ください。ココ。

●全10曲
●極私的アルバム評価  
★★★★★

・とにかく、今まで出てなかったモノが、「出た」ってこと、それだけで評価は高いですよ。1から4のメインタイトル曲が聞かれるのは大きい。このアルバムには「ダーティハリー4」が4曲、「ダーティハリー」が2曲、「ダーティハリー2」が1曲、「ダーティハリー3」が3曲の構成です。「ダーティハリー3」のみジェリー・フィールディングの作曲。ロバータ・フラックが歌った「ダーティハリー4」の主題歌“This Side of Forever”は、この盤だけで聞かれる曲。それぞれの曲は、この後に出たアルバムの曲と微妙に違っていますので、この盤はLPでも貴重です。



●ダーティハリー/アンソロジー
  Dirty Harry Anthology

 作曲 / Lalo Schifrin ラロ・シフリン



●全19曲  42分
●極私的アルバム評価  
★★★★★


・上記「ベスト盤」のCD化かと思ったら大間違い。ラロ・シフリンの集大成です。「1」と「2」と「4」のラロ・シフリンの曲が他の盤とは違ったヴァージョンで入ってます。これもジャケットのどこを見ても「スコア」とも「サントラ」とも書いてません。この盤はこの盤の曲ですのでこれも貴重でしょう。初っ端にハリーの「アア?!」の長セリフが入ってます。これもこの後の盤には無いので貴重です。

 「5」が入ってないのはちょっと不思議ですね。このアルバムリリースは、確か「5」の公開後だったと思いますが。

 このアルバム、発売時にも話題になったのですが、ライナーノーツと言うか、曲名書いてある欄にどの作品からの曲かが書いてないんですよ。今回調べましたが、それが分かる資料は見つからず、まあこれの以降に全部スコアのアルバム出てますからね、聞けば大体分かりますが、今回、自分で腰入れて調べました。どうしても分からなかったのが2曲。下記のとおりです。

1.Dirty Harry's Creed 3:26
(「ダーティハリー」より、ハリーのセリフ入り。メインタイトル)
2.Scorpio's Theme 3:07
(「ダーティハリー」より、スコルピオの2曲を編集)
3.Sudden Impact 2:52
(「ダーティハリー4」より、メインタイトル)
4.Road to San Paulo 1:07
(「ダーティハリー4」より)
5.Hot Shot Cop 1:26
(「ダーティハリー4」より)
6.Magnum Force Theme 2:10
(「ダーティハリー2」より、メインタイトル)
7.Stake-Out 2:32
(「ダーティハリー2」より)
8.Another Victim 1:21
(「ダーティハリー」より、Liquor Store Holdup)
9.Robbery Suspect 2:14
(「ダーティハリー4」より)
10.Floodlights 1:35
(「ダーティハリー」より)
11.The Cop 2:00
(「ダーティハリー2」より、The Cop + Magnum Force)
12.Unicorn's Head 2:40
(「ダーティハリー4」より)
13.Good-Bye Cop 1:27
14.The Bait 0:49
(「ダーティハリー」より)
15.San Francisco After Dark 3:05
(「ダーティハリー4」より)
16.The Crooks 1:36
(「ダーティハリー2」より)
17.The Mayor 2:24
18.Palancio 4:08
(「ダーティハリー2」より)
19.Ray of Light 2:03
(「ダーティハリー4」より、ロングヴァージョン)

・追記 / 「ダーティハリー アンソロジー」の裏面

 ネットをうろついていて見つけました。これはレコード盤の裏面のようですが、
 CDの曲が書いてあるところも似たようなもんです。
 これ、英語圏の人だって読めませんよ。筆者(youon)は虫眼鏡で見ました。





●「ダーティハリー」Dirty Harry シリーズの音楽について・その2

 さて、「その1」にも書きましたように、なかなか出ないんですよ、1本1本のサントラが・・。
 1971年の「ダーティハリー」公開から十数年経ってやっとベスト盤・・。
 それが、”急に思い出したように”、2000年代だったでしょうか、「ダーティハリー」、「1」から「5」、シリーズ全てが、順番にでしたが全て出た。あれだけのヒット作、30年以上時を経て出すかい?と喜びよりも呆れたのが先でしたね筆者(youon)は・・。どうもシフリンのレーベル、Aleph Recordsってのが出来たかららしいですが、もちろん全部、引っ掴むように買いましたわ。

 まあ、全作、「完全版」と言ってよろしいでしょうね。「1」のセリフや「4」の歌唱曲は入ってませんが、全て「スコア」です。つまり正確にはサントラではない。映画本編の音源そのままではないということ。本編音源忠実に再演奏した盤ということです。これで「その1」で申し上げたベスト盤2枚含めて、これ以上のコレクションは有り得ないでしょう。紙ジャケット仕様の「ダーティーハリー」完全版というのもあるようですが、下記の盤に練習音響が入ってない盤のようです。

 では1作目から寸評含めてご紹介しましょう。



●「ダーティハリー」完全版
 DIRTY HARRY  THE ORIGINAL SCORE BY LALO SCHIFRIN
 オリジナルスコア

 作曲 / Lalo Schifrin ラロ・シフリン



●全22曲 43分
●極私的アルバム評価  
★★★★★

・シフリンが一番油が乗ってる時期の作品ですから、推して知るべしであって、ノリノリです。旋律が完成されてない上品なメインタイトルよりも、サソリのテーマとも言える音楽がグイグイ来ますね。スコープを覗き狙いを定める映像を盛り上げている。
 メインタイトルは本編では前後に分かれてますが、このスコアではくっつけてます。と言うかくっつけないと1曲になりませんし、どのヴァージョンもくっつけてます。もし本編どうりに作るとしたら、排気口の音のSE入れないとね。



●「ダーティハリー2」完全版
 MAGNUM FORCE  THE ORIGINAL SCORE BY LALO SCHIFRIN
 オリジナルスコア

 作曲 / Lalo Schifrin ラロ・シフリン



●全22曲 51分(某所に124分と書いてあったけど間違いでしょう)
●極私的アルバム評価  
★★★★★

・「燃えよドラゴン」の後か前か、いずれにせよ同時期、「エクソシスト」でシフリンがフリードキンからえらい目に合わされたのもこの時期のはず。筆者(youon)はこの時期が、60年代のTV、「スパイ大作戦」から、2007年の「ラッシュアワー3」に至るシフリンの長い映画音楽仕事のピークだと思ってます。70年代初頭の頃ですね。
 「ア、アーア。アーアーアー!」のテーマ音楽のカッコ良さは当時の語り草でした。シフリンの実験精神と言うか、「ブリット」の追尾シーンに匹敵する音楽の思い切りの良さ。主張性とでも言いましょうか、音楽が映像を引っ張っているいい時代ですよ。
 今作品では、ハリーのテーマと共に、マグナムフォースのテーマも旋律で出して来ます。


●「ダーティハリー3」完全版
 THE ENFORCER  THE ORIGINAL SCORE
 BY JERRY FIELDING
 オリジナルスコア

 作曲 / Jerry Fielding ジェリー・フィールディング



●全13曲 40分
●極私的アルバム評価  
★★★★★

・この「3」だけ音楽はジェリー・フィールディングの担当です。イーストウッド=マルパソプロとは、「アウトロー」、「ガントレット」などで組んでいます。
 実はその後に表面化するイーストウッドの音楽性は、シフリンよりもフィールディングの方が近いのではないかと感じます。
 フィールデングはとにかく正統派ジャズですね。この「3」でも全編ジャズで押しています。メインタイトルのカッコ良さは、シフリンとはまた違ったジャズのノリで聞かせます。
 その中でも6分間3部構成に渡る「Rooftop Chase」のノリの良さは素晴らしく、さらには映像にもピッタリ合ってるという完成度の高さ。コミカルなムードも盛り上げている。本編とは若干演奏が違いますが問題ありません。正統派ジャズを全く同じに演奏するのは無理な話でしょう。



●「ダーティハリー4」完全版
 SUDDEN IMPACT  THE ORIGINAL SCORE BY LALO SCHIFRIN
 オリジナルスコア

 作曲 / Lalo Schifrin ラロ・シフリン



●全22曲 43分
●極私的アルバム評価  
★★★

・ん?どうしちゃったのでしょうシフリン。もう「1」や「2」のノリはありません。今作「4」の内容自体が、女性の復讐劇というサスペンス色が強いためか、シフリンが得意だったアクションシーンの盛り上がりは聞かれません。キューキューといった暗めのサウンドは映像に合わせているとは言え、曲として楽しむことは難しいでしょう。
 警察無線のSEを入れたメインタイトルはシフリンらしさがありますが、本来のシフリンであれば、SEに頼らなくてもカッコ良い曲は作れたはずです。



●「ダーティハリー5」完全版
 THE DEAD POOL  THE ORIGINAL SCORE BY LALO SCHIFRIN
 オリジナルスコア

 作曲 / Lalo Schifrin ラロ・シフリン



●全12曲 40分
●極私的アルバム評価  
★★★

・メインタイトルはシフリンらしくカッコ良さげです。ただ普通。アクションシーンはシフリンらしくそれなりに盛り上げていますが、どうも力が入ってない。
 本編のアクションシーンそのものもミニーカーの追跡で、音楽でミニカーを表現しちゃうから、なんかスケールの小さい曲作りになっちゃいました。
 相棒の中国系刑事のクンフーアクションも、いわゆる欧米人が考えるアジア人クンフーサウンドで肩透かしです。
 残念ながら往年のシフリンはもう見られません。この頃(1988年当時)シフリンは映画の仕事を大幅に減らしています。10年後(1998年)の「ラッシュアワー」での復活まで待つことになります。