「ミッション・インポッシブル」
MISSION IMPOSSIBLE シリーズ、
音楽について

●a).MUSIC FROM THE ORIGINAL MOTION PICTURE SCORE
 ミュージック・フロム・ザ・オリジナル・モーションピクチャー・スコア


●全18曲・53分
●極私的アルバム評価  
★★★


●このアルバムについて(3アルバムのうち1番目アルバム) 

●映画「ミッション・インポッシブル」公開時にいくつか出た音楽アルバム(公式には3枚出たと認識しています)には、多くの逸話があると思いますが、まず筆者(youon)が思ったのは『何故ラロ・シフリンじゃないのか?』です。

 当時(1996年近辺)、ラロ・シフリンは一線を退いていたとはいえ、コンサートを開いたりと活躍していました。

 「ミッション・インポッシブル」(「スパイ大作戦」)が、60年代のTVシリーズながらも、現代(当時)まで語り繋がれていたのは、ラロ・シフリン作曲のテーマ曲のお陰と言っても差し支えないでしょう。今回の映画化にあたって、ラロ・シフリンの名前が挙がって来ないわけがありません。

 何かしらの理由でシフリンに断られたか、もしくは版権料だけ払って、シフリンは眼中に無かったかです。シフリンの映画音楽の実力はとうに旬を過ぎていたことは明らかでしたし。

 そして、今回あらためて調べて驚いたことは、筆者(youon)が情報に疎かったのか、トム・クルーズ主演、第1回映画化作品「ミッション・インポッシブル」のサントラは、このダニー・エルフマンの前に「バック・トゥー・ザ・フューチャー」で有名なアラン・シルヴェストリが曲を付けていたことです。

 アラン・シルヴェストリ盤のサントラも当時発売されていたようで(多分、非公式のブート版)、それについては、youtube で聞くことができるので、後日、パッケージデザインも含めて述べたいと思います。

 さて、前置きが長くなりましたが、公式で3枚出てるサントラでこの「ミュージック・フロム・ザ・オリジナル・モーションピクチャー・スコア」(上記パッケージデザイン)が代表となるでしょう。

 「ミッション・インポッシブル」+「サントラ」で検索するとロックバンド「U2」の曲が多く収録された盤がまず挙がってきますが、映画劇中曲ということでは、この「スコア盤」を挙げるのが順当でしょう。

 この盤では、18曲全てダニー・エルフマンが担当し、テーマ曲と、クライマックスの曲にシフリンの旋律を入れ込んで、実に的を射た使い方をしています。
 高速鉄道とヘリコプターとのアクションシーンで、”ここぞ!”というところで、「スパイ大作戦のテーマ」ですから、「おおっ!」と思った観客も多いはずです。

 ダニー・エルフマンは基本的に曲を聞かせると言うよりか、画面を盛り上げさせる音響づくりをしていて、ハッキリ言ってシフリンの旋律がない曲は、とっつきにくいです。「つまらない」と言っても過言ではないですね。

 エルフマンの曲作りは、多分、画面と合わせて見ると良い効果を出していると思いますが、今回は画面と見比べてはいません。まあ、その前に筆者(youon)は、ダニー・エルフマンが苦手です。「バットマン・リターンズ」なんて苦痛に感じますから。それに比べれば、聞けるだけ「良し」で、シフリンの旋律がプラスされ及第点、といったところです。

 「ミッション・インポッシブル」のサントラは、他に2アルバムとTVシリーズサントラ、1アルバム、そして「ミッション・インポッシブル」シリーズの他アルバムがあります。




●「ミッション・インポッシブル」
MISSION:IMPOSSIBLE の音楽について・
その2

●b).MUSIC FROM AND INSPIRED BY THE  MOTION PICTURE
 ミュージック・フロム・アンド・インスパイア・バイ・ザ・モーションピクチャー


●全15曲・64分
●極私的アルバム評価  
★★★


●このアルバムについて(3アルバムのうち2番目アルバム) 

●「ミッション・インポッシブル」+「サントラ」で検索するとロックバンド「U2」がプロデュースした曲が多く収録されたこの盤がまず挙がってきますが、正直、いかがなものかと思いますね。まあ前出の別の盤は「スコア盤」ですから、こちらは「ミュージック・フロム」ですからね。サントラとしてはこちらが先になってしまうのでしょう。

 このアルバムの実態は、「ミュージック・フロム・アンド・インスパイア・バイ・ザ・モーションピクチャー」とあるように、確かに本編からの音楽、そして「インスパイア」というのがミソで、なんと本編とは全く関係ない、ロックバンド「U2」のメンバーがプロデュースしたとされるロックやポップスが、11曲入ってます。

 つまり、ラロ・シフリンが作曲した旋律を含む、勘所のサントラはダニー・エルフマン作曲の3曲と、ラリー・ミューレン&アダム・クレイトンのテーマ曲のみ。あとは、『なんで関係ない曲を聞かなきゃならんの?』というのが11曲ということです。

 ダニー・エルフマン作曲、シフリンの旋律を入れ込んだ3曲とテーマ曲は、さすが、良いのをピックアップしただけあって聞かせます。このアルバムの魅力はそこだけです。あとの曲は、U2ファンとか、ちょっと目的が違うのではという印象です。

 ライナーノーツには、ダニー・エルフマンら作曲の4曲を除き、その他すべての曲に「*」マークが付いていて、「*」の説明に、these tracks are not contained in the movie.(これらのトラックは映画には収録されていません)と書いてある。

 ちょっと商売しすぎなんじゃないですか?と言いたくなりますね。
 さらに「ミッション・インポッシブル」はもう一枚アルバムがありますから。


●「ミッション・インポッシブル」
MISSION:IMPOSSIBLE の音楽について・その3


●c).LARRY MULLEN & ADAM CLAYTON / THEME FROM MISSION:IMPOSSIBLE 
 ラリー・ミューレン&アダム・クレイトン / ミッション・インポッシブルのテーマ


●全5曲・20分
●極私的アルバム評価  
★★

●このアルバムについて(3アルバムのうち3番目アルバム)




 ラロ・シフリン作曲の「スパイ大作戦のテーマ」及び「スパイ大作戦」で作曲使用されたラロ・シフリンの旋律を、テクノ風に加工した盤です。簡単に言えば。

 当時(90年代中頃)流行ってましたよね、こういう手法。「サンダーバード」のリミックスとか、買いましたよ私(筆者ね)。曲の途中にセリフを入れたり・・。
007でもモービーが「ノー!ミスター・ボンド!・・・」とかやってましたね・「トゥモロー」の時だから、97年ですよ。

 もちろん原曲がいいから聞けるのであって、加工したら良くなるもんじゃないでしょう。かえって無機質になるだけです。




 「ミッション・インポッシブル」についてはTVシリーズサントラ、1アルバム、そして「ミッション・インポッシブル」シリーズの他アルバムがあります。



●「ミッション・インポッシブル」 MISSION:IMPOSSIBLE の音楽について・その3
●d).MUSIC FROM ANTHLOGY
MISSION:IMPOSSIBLE
 ミュージック・フロム・アンソロジー・
ミッション・インポッシブル



●全22曲・60分
●極私的アルバム評価  
★★★★

●このアルバムについて
(映画のサントラではありません)

●筆者(youon)の手元にある「ミュージック・フロム・アンソロジー・ミッション・インポッシブル」のCDジャケットは上記の図柄で、1994年のアメリカ製とのことですが、筆者(youon)のウォークマンのネット検索で表示されるジャケットデザインは、下記のモノになってます。同じ22曲ですから、同じモノと推測します。イギリス盤のようです。



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 そして、今回この記事を書くにあたって初めて気が付いたのですが、筆者は下記のジャケットデザインのレコードをすでに所有しておりました。
 11曲入りですが全ての曲のタイトルが上記CD22曲の中に入ってますから、同モノ(CD盤が曲を追加している)と考えてよろしいでしょう。



 筆者(youon)がこの上記のLPレコードを70年代の半ばに買った動機は明白です。「燃えよドラゴン」でシフリンに魅せられて、当時発売されていたシフリンのアルバムを買いあさっていました。

 ところがこの「MUSIC FROM MISSION IMPOSSIBLE」のレコードに期待した「燃えよドラゴン」のようなパンチ力は感じられず、そのまま忘れていました。

 では何故、同様内容であろう上記のCDアルバム「MUSIC FROM ANTHLOGY MISSION:IMPOSSIBLE」を90年代中ごろに買ったのか? それは、映画のサントラ、ダニーエルフマンらの「ミッション・インポッシブル」に物足りなさを感じ、大元のラロ・シフリンならパンチのある曲が聞けるだろうとLPをすっかり忘れたままCDを購入したという訳です。どこでいつ購入したのかさっぱり失念しています(多分、渋谷のすみや?)。

 さて今回も前置きが長くなりましたが、「MUSIC FROM ANTHLOGY MISSION:IMPOSSIBLE」ですが、ざっくり言えば、ラロ・シフリンのビックバンドジャズ、ムードミュージック集ですね。悪くないです。聞かせます。しかし、「スパイ大作戦」の劇中劇のサスペンスやパンチのある音楽を期待すると肩透かしです。

 もちろん、テーマ曲のノリや「ミッション・インポッシブル(スパイ大作戦)」の勘所のメロディ、旋律、リズムはしっかり押さえてます。が、途中で楽し気なイメージになったりと、1曲1曲がビックバンドジャズのムードミュージックに仕上っています。それを踏まえて鑑賞する分には、完成度の高いアルバムと言えます。「心地良い」という表現が合うアルバムです。

●当初、アラン・シルベストリが「ミッション・インポッシブル」の曲を付け、
没になっていた。

●e).Alan Silvestri ‎– Mission Impossible
(The Original Unused Motion Picture Score)
 アラン・シルベストリ-
ミッション・インポッシブル(ザ・オリジナル・アンーユーズド・モーションピクチャー・スコア)
 



●全20曲・54分(多種有り)
●極私的アルバム評価  
所有しておりません。
youtubeで聞いた限りでは悪くはないが、本編のイメージに合っていないのだと思います。

●このアルバムについて(アラン・シルベストリの没になった曲集)

 筆者(youon)は、このミッション・インポッシブルの一連の記事を書くまで、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」や「プレデター」などのあの名作曲家、アラン・シルベストリが、「ミッション・インポッシブル」の曲を全部付けており、それがまるまる没になって、現状のダニー・エルフマンに変わっていたとは知りませんでした。

 さらに、その「没アルバム盤」が数種出てるようで、これ欲しいです。が、もう期を逃してますので、うかつに手を出せませんね。まず間違いなくブート盤(いわゆる海賊盤)ですから。サイトには、「Unofficial Release(公式リリースではありません)」とハッキリ書いてある。

 まあ、取り合えず、下記の2つのサイトをご覧になってください。


https://www.discogs.com/Alan-Silvestri-
Mission-Impossible-The-Original-Unused-
Motion-Picture-Score/release/2547679


https://www.ost.co/254-mission-impossible.html

 youtubeにもアラン・シリベストリの没音楽がアップされてます。著作権問題ありと思いますので、こちらには持ってきませんが、興味ある方は、youtubeで直接お聞きください。

 筆者(youon)は、youtubeで10曲ほど聞きました。さすがアラン・シリベストリです。とっつきやすい聞きやすい曲で迫力もある。テーマ曲とは別にイーサンのテーマと思われる旋律も作曲しており、しっかり仕事してますね。

 ただ、イーサンのテーマにしても、何かとぼけたようなイメージもあり、youtubeのヘリと高速列車のアクションシーンにアラン・シリベストリの曲を付けた動画も見ましたが、B級アクションになってしまうような印象もあります。

 映画「ミッション・インポッシブル」第1作目は、ブライアン・デ・パルマ監督のミステリー色が強い作品です。結果、アラン・シリベストリが没になったいきさつは知りませんが、イメージが合わなかったのではないかと推測します。



 

 ●a)「ミッション:インポッシブル2」オリジナル・サウンドトラック・オリジナル・スコアヴァージョン
Hans Zimmer




 
 大変恐縮ですが筆者(youon)は、映画「M:I-2」のサントラを所有しておりません。「M:I-2」の音楽については、録画してある本編を音楽を注視して再鑑賞しました。それについては後述します。

 その前に、「M:I-2」のサントラについて、ネットで検索いたしましたが、「ミッション・インポッシブル」の時のようにサントラと称する盤が数枚(2盤)リリースされているようです。そのジャケットデザインが「タワーレコード」と「amazon」とでは違います。「タワーレコード」では、ハンズ・ジマーの「スコア盤」が上記のデザイン。「ミュージック・フロム・アンド・インスパイアド・バイ・M:I-2」が下記のデザインで、「amazon」では逆になってます。「タワーレコード」の方が正しいのではないでしょうか。


●b) ミュージック・フロム・アンド・インスパイアド・バイ・M:I-2



 「ミッション・インポッシブル」の時に申しましたように、「スコア」と「インスパイア」とでは偉い違いですからね、ハンズ・ジマーのサントラを聞くには、「スコア」を手にするべきでしょう。「インスパイア盤」は、ネットのサンプルを聞く限りは、全てロックでした。本編にはそんなにロックは出ていません。「1」と同様に本編に出てない曲がリリースされてるのではと推測します。所有しておりませんのでこれ以上は申しません。

 さて、「スコア盤」も筆者(youon)は、所有してませんので、録画してあった本編を音楽注視して再見しました。まず作品のB級加減は、別のコーナーで申し上げるとして、ハンズ・ジマーの音楽は、まあ無難にこなしてるといった感じです。

 ハンズ・ジマー自体は、作品数は多いものの、どうも筆者(youon)にとって捉えどころの無い作曲家です。ハンズ・ジマーという個人は確かに存在はしますが、仕事はどうも複数人のチームでやってるという話を聞きます。捉えどころの無い理由はそれかもしれません。

 ラロ・シフリンの「スパイ大作戦」の旋律は、タイトルバックに大幅に編曲しロック調て登場。そして終盤のバイクアクションにも登場しますが、特にこれといったインパクトはありません。

 ほかの場面のハンス・ジマーの音楽も要所要所にのってはいますが、特に印象に残らないんですよね。逆の言い方をすれば、物語進行の邪魔をしない音楽の付け方。ハンス・ジマーが活躍し始める90年代後半より、こういう傾向の映画音楽が一般的になってきたように思います。つまり個性のある映画音楽作曲家が少なくなったということです。
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 ●ミッション・インポッシブル3 m:i:Ⅲ の音楽について

Music From The Original Motion Picture Soundtrack
m:i:Ⅲ
Music By
MICHAEL GIACCHINO

ミュージック・フロム・ザ・オリジナル・モーションピクチャー・サウンドトラック
m:i:Ⅲ
マイケル・ジアッチーノ


●全21曲・65分
●極私的アルバム評価  
★★★★

 監督のJ・J・エイブラムスと共に多分、この「ミッション・インポッシブル3」が出世作となる作曲家マイケル・ジアッチーノは、ゲーム音楽出身とのことで、今作でもゲーム音楽手法らしく「映像を盛り上げ、音楽を主張しない」という方法で作曲しています。

 筆者(youon)が、このところ一連の「ミッション・インポッシブル」の音楽について考察し、今更ながら気が付きましたが、「ミッション・インポッシブル・シリーズ」のテーマ曲はあくまでもラロ・シフリンが作曲した「スパイ大作戦」のテーマ曲であり、またそれと関連した旋律(メロディ)であります。

 ですので、1作目でイーサンのテーマを作曲し没になったアラン・シルベストリのように、作品ごとに独自の旋律(目立つ音楽)を作っては、基本的にはご法度なのだと推測します。

 このことは、まだ細かく検証はしておりませんが、現在最新である5作目の「ミッション・インポッシブル・ローグネイション」までシリーズ全部に言えることで、現在撮影中の6作目もこの先もラロ・シフリンの音楽の”縛り”は、続くんだろうと思います。

 さて、この「3」ですが、「スパイ大作戦」のテーマ曲を特に大きく編曲することなくジアッチーノのノリで出し、本編に入ると早速、「スパイ大作戦」の旋律の要素であるシフリンの「THE PLOT」を流し、そのまま「THE PLOT」の旋律を時たま入れながら、ジアッチーノの「タ・タ・タ・タ」というリズムでアクションシーンまで盛り上げています。

 この手法は全編、特にアクションシーンにおいて使用され、ジアッチーノ独自の旋律は1小節か2小節でリズムに打ち消され、ジアッチーノ独自の旋律は、「ラブテーマ」とも言えるイーサンと妻とのシーンに美しく流れるのみ。

 映画本編の音楽は映像を盛り上げて、優秀な出来と言ってよろしいでしょう。が、これをアルバムとして聞くと、「タ・タ・タ・タ」というリズムを刻む音楽が並び、どれも似たような印象になっています(「ラブテーマ」を除く)。

 そして、マイケル・ジアッチーノは、次作4作目の「ミッション・インポッシブル・ゴースト・プロトコル」も担当しました。この「3」の合格点から「スタートレック」を経て、どう変容しているのか楽しみです。

オリジナル・サウンドトラック M:i:III Michael Giacchino
















 ● Mission Impossible-Ghost Protocol Soundtrack
 Michael Giacchino
「ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル」サウンドトラック
 マイケル・ジアッキノ



  まず筆者(youon)は、「ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル」のサントラ盤を所有しておりません。したがいまして、この記事を書くにあたって、録画してある本編を音楽に注視して再見しました。

 じらすような文を書くのは不本意ですので、先に結論申しましょう。マイケル・ジアッキノの手腕は「3」の時よりも確実に上がっており、ジアッキノのオリジナル旋律も要所要所で聞かせ、映画音楽の仕事としては、作品自体を盛り上げる上等な仕事をしています。

 では、なぜ筆者(youon)はサントラを所有してないのか?と訊かれれば、「筆者(youon)にお金が無かったから」が正直な答えでしょう。じゃあお金をあげるからこれを買え、と言われたら、う~ん、違うモノ買ってしまうかもしれません。

 つまり、映画音楽の上出来さは全面的に認めますが、購買につながる突き抜けた魅力があるかと言うと、突き抜けてはいません。やはりシフリンの”縛り”があるのかもしれません(「スパイ大作戦のテーマ」より目立ってはいけない)。

 そこら辺が、2011年の「ミッション・インポッシブル ゴースト・プロトコル」におけるマイケル・ジアッキノの立ち位置でしょう。良い言い方をすれば、映像の邪魔をせず、音楽が出しゃばらず、「スパイ大作戦」のブランドを崩さずに、的確な仕事をした作曲家、それはマイケル・ジアッキノであるということです。

 ちなみに「ゴースト・プロトコル」のサントラ販売サイトでは、作曲者表記を「ジアッキーノ」ではなく、「ジアッキノ」になってますので、こちらもそれに準じます。
 また、どの販売サイトも、「Soundtrack サウンドトラック」と書いてありますが、当該ジャケット表示には、「MUSIC FROM THE MOTION PICTURE」とだけ書いてあります。普通、「オリジナル・サウンドトラック」とか「スコア」とか書きますよね。まあ、所有してないんでこれ以上突っ込みません。

 さて、またもや前置きが長くなりました。本編の音楽です。
 この「ゴースト・プロトコル」、作品の映像の中の80%ぐらいは音楽がのっているのではないでしょうか。それだけ音楽が作品をしっかり支えています。

 そして今回のジアッキノの仕事は「3」の時のような「精一杯な仕事感」とは違って、今回の「ゴースト・プロトコル」では、舞台になる場所ごとにそれに合った旋律を聞かせるなど、余裕さえ感じられる仕事の仕方をしています。

 まずタイトルバックの音楽は、「スパイ大作戦のテーマ」です。これはこのシリーズの”縛り”ですね。別のテーマ音楽が出てくるのは、まず考えられません。「スパイ大作戦のテーマ」をどういう風に聞かせるか(編曲するか)でしょう。
 今作では、ジアッキノが「スパイ大作戦のテーマ」を比較的静かな感じで編曲し、ジアッキノ独自の旋律も少々聞かせて、上品に仕上げています。

 各舞台(シーンの場所)のそれぞれのテーマ曲ですが、モスクワならロシアの軍歌風な曲をつけ、ドバイは中東風からアクションシーンもドバイの旋律で突き進みます。
 ムンバイ到着は、「スパイ大作戦のテーマ」をインド風にアレンジ、そのまま途切れることなくパーティ会場のフロアダンスの音楽に、そしてアクション前のスリリングな音楽へと繋いでいく。これだけでもジアッキノの実力の余裕が受け取られます。

 ラストシーンは「3」ですでに登場しているラブテーマで閉め、エンドタイトルは、ムンバイのテーマ、モスクワのテーマ、ムンバイのフロアダンス、ドバイのテーマといったメドレー。そして「スパイ大作戦のテーマ」でバッチリ決めて終わりです。見事です。



 ●ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション
 MISSION:IMPOSSIBLE ROGUE NATION  の音楽について

Music From The Motion Picture
Music By
JOE KRAEMER

ミュージック・フロム・ザ・モーションピクチャー・サウンドトラック
ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション
ジョー・クレイマー


●全19曲・74分
●極私的アルバム評価  
★★★

 今回は筆者(youon)は、当アルバムを所有しており、この記事を書くために「ミッションインポッシブル・ローグ・ネイション」の録画を音楽に注視して再見しております。

 何故、今回はこのアルバムを所有する気になったかと申しますと、映画館で本編を見た時に、大元の「スパイ大作戦」、シフリンの旋律が多く使われていると思ったからです。

 実際、アルバムには、「スパイ大作戦のテーマ」や「THE PLOT」などシフリンの旋律がちょこちょことそこらかしこに散らばれております。が、音楽として、または映像のインパクトとしてそれが有効に使われているとはちょっと疑問です。

 アルバムに収録されている音楽は、ほぼ本編に掛かっている音楽を網羅しております。
 アルバムを聞くだけで推測できるように、この音楽は本編の映像に合わせて出来上がっていると言うことです。まあ、当り前なことで、「映像とかけ離れてどうする?」と言う考え方もありますが、出来る作曲家は、映像を際立たせると同時に音楽を主張しますよ。

 このアルバムの独自の旋律はありますが、「たらら~」を繰り返すのが主で魅力はありません。そんな中で、シフリンの旋律をまぶすくらいなら、アクションシーンには「スパイ大作戦のテーマ」をそのまま、アクションシーンが終わるまで流せばよし、サスペンスシーンにはシフリンの「THE PLOT」を最後まで聞かせればよろしいです。

 自己を主張しない映画作曲家を使うくらいなら、せっかくシフリンに版権料払ってるんだから、過去の「スパイ大作戦」の音楽をそのまま(多少画面に合わせて編曲し)使えばよろしいです。

 第6作目が出るまで、今回で「ミッション・インポッシブルの音楽について」は一区切りです。多少、きつめなことを申しました。



●ミッション・インポッシブル フォールアウト




 「ミッション・インポッシブル」MISSION IMPOSSIBLE 映画シリーズについては、こちら

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