●デヴィッド・アーノルド監修アルバム
「Shaken And Stirred」のボンド音楽について

●全11曲 53分
●極私的アルバム評価  
★★★★

●「Shaken And Stirred」の音楽について
 1997年の「トゥモロー・ネバー・ダイ」で、デヴィッド・アーノルドがボンド映画の作曲家としてデビューする前のアルバムですから、'96年かそこらに制作されたアルバムでしょう。いずれにせよもう20年も経つなんて信じられませんわ。

 このアルバムは、デヴィッド・アーノルドが、サントラとは別に、過去のボンドミュージックをリメイク、プロデュースしたモノです。

 今まで「このアルバムがヒットしたので、アーノルドがイオンプロに採用されたのだろう」と思っていましたが、なんかレコード店がイオンプロにアーノルドを紹介したとネットに書いてあった。ホントかね?

 まあとにかく、過去にボンドミュージックを別演奏したアルバムはありましたが、元の曲を超えるなんてことはなかったですよ。それまでは全てイミテーションだった訳。

 ところがこのアルバム、「Shaken And Stirred」は、元ネタを超えようとする意気込みがありますよね。そして実際、超えちゃった曲もある。

 ★は4つ付けてます。これね、当時のインパクト考えるとぶっちぎりで★5つですわ。しかし、今、冷静に聞くと、「もっと出来ただろ」と思うんですよね。曲数も11曲で少なめです。あと2曲は欲しかった。そんな訳で実質★5つで★は4つです。

 1曲1曲、全部言います。編曲度数は%で。10%なら「原曲を少し変えただけ」。120%なら「原曲に無かった以上のモノがある」ということです。

*******************

1 Diamonds Are Forever (feat. David McAlmont) 3:52
  「ダイヤモンドは永遠に」  30%
 原曲のシャーリー・バッシーには悪いが、歌はこっちの方が上手いんじゃないかと思う。アレンジもいい。

2 Nobody Does It Better (feat. Aimee Mann) 4:26
  「ノーバディ・ダズ・イット・ベター(私を愛したスパイ)」 30%
 テクノ風味を入れ込んで上手く行ってる。

3 Space March (feat. Leftfield) 5:31
  「スペースマーチ(007は二度死ぬ)」 50%
 「スペースマーチ」という名の曲はサントラ盤には無い。一部のボンドミュージックコピーアルバムが使用してる名称。
 
4 All Time High (feat. Pulp) 4:32
  「オール・タイム・ハイ(オクトパシー)」 40%
 男性歌手が独白風に歌う。

5 Moonraker (feat. Shara Nelson) 3:57
  「ムーンレイカー」 20%

6 The James Bond Theme (feat. LTJ Bukem) 6:59
  「ジェームズ・ボンドのテーマ」 90%
 ほとんど原曲の影が無く、「これがジェームズ・ボンドのテーマです」と言われれば、雰囲気はあります。

7 Live And Let Die (feat. Chrissie Hynde) 2:43
  「死ぬのは奴らだ」 20%

8 Thunderball (feat. Martin Fry) 4:15
  「サンダーボール作戦」 30%
  
9 From Russia With Love (feat. Natacha Atlas) 3:12
  「ロシアより愛をこめて」 20%
 歌手が女性になっただけで雰囲気、編曲具合もほぼ原曲どおり。

10 On Her Majesty's Secret Service (feat.Propellerheads) 9:25
  「女王陛下の007」 120%
 「女王陛下の007」自体テクノ風味でバッチリ決めて、ヘリのSEもノリノリ。驚くべきは間にまるまる「スペースマーチ」が入り込んで別の曲にしている。

11 We Have All The Time In The World (feat. Iggy Pop) 3:44
  「愛はすべてを超えて」  20%
 曲の編曲はほとんどないが、歌が原曲のルイ・アームストロングような癖は無いので、だいぶ印象は変わる。 

 今回、ネットで調べたら「日本版のみ12曲入り(合計56分)で「ジェームズ・ボンドのテーマ」のオーケストラ・バージョン(新録)も収録」とのこと。筆者(youon)が買ったのはUK盤だったからそれ入ってないです。失敗した。この20年、知らなかった。
 
(2017年執筆、2021年レイアウト変更)

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●「ゴールデンアイ」
 GoldenEye の音楽について

●全16曲
●極私的アルバム評価  
★★

 ●タイトルバック
 GoldenEye 主題歌・ティナ・ターナー
 主題歌作詞・作曲、ボノ、ジ・エッジ。往年のベテラン、ティナ・ターナーがシャウトする名曲。
 ●挿入歌
 ・正当な挿入歌としては特になし。wikiには下記の情報がありますが、サントラ盤には見当りまでせん。
 劇中歌「スタンド・バイ・ユア・マン」 - ミニー・ドライバー
作詞・作曲 - ビリー・シェリル、タミー・ウィネット
 ●ラスト曲
 エクスペリエンス・オブ・ラヴ エリック・セラ
 作詞・作曲、エリック・セラ、ルパート・ハイン
 
●「ゴールデンアイ」サントラ、作品内の曲について

 賛否両論とのことですが、筆者(youon)は「否」の方ですので、なるべく悪口三昧にならないよう気を付けます。

 まずティナ・ターナーの主題歌ですが、これは迫力ある名曲。これはこれで終わり。問題は本編とラストのエリック・セラです。
 当初、セラは、音楽オファーを一度断って、周囲の説得でオファーを受けたと聞いています。やる気、もしくは「ボンド映画」に対する敬意が無いならば、断るべきだったと思いますね。

 なにしろ賛否両論の「否定側」には、「音楽全部入れ替えて作品自体をリブートせよ」といった意見が出るくらいで、筆者(youon)としても、主題歌以外、音楽全部入れ替えれば、「ゴールデンアイ」という作品自体が、150%ぐらい面白くなるのではないかと思っています。

 上記、極私的アルバム評価で星2つです。戦闘ヘリ脱出シーンの音楽は迫力があり映像を盛り上げています。そこは評価できますが、全体としてはやはり、甘めで星2つですね。

 ボンドのテーマを一切使っていないので良くないという意見がありますが、実はボンドのテーマ旋律は、ところどころに使っています。使っていますが、「コンカラカンカンコンコンコン」とシンセやティンパニーを使った気の抜けた入れ方。曲や本編を盛り上げるために入れてはいません。

 実はこの文を書くために「ゴールデンアイ」を見直してみました。またサントラも何度も聞き直しました。まずサントラは曲として1曲1曲はそれなりに聞かせます。シンセを中心として、全体にエコーがかかったような曲作り。「ゴ〜ン」とか「ファ〜ン」と言った音響が印象に残ります。全体的に暗いです。

 本編の劇中曲としては、どの曲が使われていたのか分からないくらい印象に残らない。つまり映像を盛り上げてもいなければ、合ってもいない。時たま「ゴ〜ン」とか「ファ〜ン」とか聞こえるくらい。音楽のヴォリューム自体も小さい。
 図書室のアクションからヴォリュームが上がり、そのままクライマックスのタンクチェイスにつながりボンドのテーマが聞こえてくる。ここの音楽は違う作曲家に差し替えられていますから、製作側から「エリック・セラは合わない」と判断された証拠です。この別作曲家はジョン・アルトマンとのことです。

 ラストの「エクスペリエンス・オブ・ラヴ」は、ムードある曲で曲としてはそれなりに聞かせますが、「ボンド映画」のラストの大団円の曲としてはふさわしいと思えず、ここがボンドのテーマだったら、作品全体の印象も随分違っただろうと思います。

 サントラに収録されてないタンクチェイスの曲は、4枚組、The City Of Prague Philharmonic Orchestra 演奏の「James Bond Collection」で聞くことができます。

・4枚組、The City Of Prague Philharmonic Orchestra 演奏の「James Bond Collection」


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● 「消されたライセンス」
 Licence To Kill の音楽について
●全10曲
●極私的アルバム評価  
★★

 ●タイトルバック
 Licence To Kill 主題歌・グラディス・ナイト
  主題歌作曲、作詞は、Narada Michael Walden, Jeffrey Cohen, Walter Afanasieff。これまでのシリーズで主題歌と劇中曲作曲は何かしらの形で繋がっていたのが、今作で初めて独立した主題歌となる。グラディス・ナイトが歌うこの主題歌は、パンチの効いたバラードで、なかなか聞かせます。
 ●挿入歌
 ・正当な挿入歌としては特になし。
 サントラ盤には、劇中に掛かる曲として、「Wedding Party」アーティスト- Ivoryと、「Dirty Love」アーティスト- Tim Feehan が収録されている。
 ●ラスト曲
 If You Asked Me To 歌・パティ・ラベル
  ダイアン・ウォーレン作曲。「消されたライセンス」DVD特典に収録されているパティ・ラベルのミュージックビデオは、けっこう迫力あり。これもパンチの効いたバラード。
 
●「消されたライセンス」サントラ、作品内の曲について
 上記、極私的アルバム評価で、星2つしか付けませんでしたが、サントラ盤として評価するならば、厳しめでやはり星2つですね。

 本編の劇中曲としては、今回担当の作曲家、マイケル・ケイメンはいい仕事をしています。していますが、これはマイケル・ケイメン(故人)の特徴で、映像に合わせて効果音的な曲をつける、こういう手法です。これは、マイケル・ケイメンが担当した他の映画作品にも言えることで、今作「消されたライセンス」でもそういう的確な仕事をしています。

 サントラには、例えば、9分10秒ある「Licence Revoked」だと、劇中曲の効果音楽を1つにまとめたような曲で、曲そのものにテーマは見えません。唯一、ボンドガールのパムをテーマにした「Pam」で美しいメロディを聞かせます。

 ボンドのテーマはところどころに登場しますが、すぐに「ジャーン」とか映像に合わせた効果音楽風に変わるので、あまり楽しめません。南米風なギターの曲はなかなかいい味を出していますが、「ボンド音楽」という感じはありません。

 今作「消されたライセンス」のマイケル・ケイメンの仕事は一種、腰の据わった仕事ぶりに見えます。特に007シリーズを意識せず、主題歌も別作曲家なので旋律に使えず、ボンドのテーマをところどころにまぶした、”アクション・サスペンス映画”の音楽を作ったといった感じです。

 終盤のタンクローリーチェイスで、ボンドのテーマが長くかかりますが、映像がマッドマックス風ですので、なんとなくしっくりきません。

 主題曲もラストの曲もいい曲で聞かせます。主題曲とラストの曲だけなら星5つですね。


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●リビング・デイライツ
 The Living Daylights の音楽について
●ボーナストラック盤・全21曲
●極私的アルバム評価  
★★★★★
●タイトルバック 
・The Living Daylightsl 主題歌・a-ha
 前作デュラン・デュランとのコラボで大成功したイオンプロは、当時、新進気鋭のノルウェーのa-haとバリーを組ませた。これはバーバラの発案と聞いています。結果2つのバージョンが存在するが、本編用は名曲。これについては後述します。
●挿入歌
・Where Has Everybody Gone 歌・プリテンダーズ
 ジョン・バリー作曲。敵のネクロスが首にかけているウォークマンより聞こえる曲。ネクロス絡みのアクションシーンにも編曲されインストメンタルで流れる。
●ラスト曲
・If There Was a Man 歌・プリテンダーズ
 ジョン・バリー作曲。シリーズ中、初めてラスト曲が独立して作曲、歌われた。

●「リビング・デイライツ」サントラ、作品内の曲について
 長年、007シリーズに貢献してきた作曲家ジョン・バリーは、今回の「リビング・デイライツ」で、007を引退すると宣言、「もう卒業しても良いと思う」といったような本人の言葉は、「リビング・デイライツ」に取り掛かる前だったのか後だったのかは、筆者(youon)は知りません。いずれにせよバリーの007シリーズの仕事はこの「リビング・デイライツ」が最後となり、同時にシリーズ上位に来る傑作アルバムに仕上りました。

 バリーは「リビング・デイライツ」の仕事、87年時以降、ムーディーな作品で賞を取ったりしたが、アクション系は「スペシャリスト」のみで、いまいち精彩に欠け、90年代は作曲したが不採用が数本あり、実質パンチの効いたバリーのアルバムは、「リビング・デイライツ」で最後になったと言ってもよろしいのではないかと思います。

 今作品「リビング・デイライツ」主題歌作曲における、バリーとa-haの確執は有名で、音楽性の違いやスケジュールなどの音楽以外での対立の話も耳にしました。アカデミー賞を何度も取ってる大家のバリーと人気上昇中とは言えひよっこa-haとの単純に格の違いだったのではと推測します。
 筆者(youon)は聞いてはいませんが、a-ha版の「リビングデイライツ」は、スローバラードといった曲とのことで、それを考えると、バリーの得意な、ジャカジャン!という合いの手のような編曲は当時の若者にはダサく映るでしょう。a-haが指名されてから、関係者(バリー本人だったか?)がa-haのコンサートへ視察に行ったところ、客はティーンの女の子ばかりで、『これは人選を間違えたかも・・』と思ったとのこと。a-ha版も聞いてみたいところです。

 さて、このアルバム「リビング・デイライツ」の成功ですが、まず、主題歌を共作とは言えバリーが作曲したこと。これにより、この「The Living Daylights」のメロディ、曲要素を本編で堂々と使えることになる。そして次が今回の「リビング・デイライツ」の面白いところで、大抵、バリーは主題歌をインストメンタルにし、ムードあるシーンで使うのですが、今回はアクションシーンに使いました。そしてそれがいい効果を上げています。

 今回、バリーは、「The Living Daylights」、ロック調の「Where Has Everybody Gone」、ムーディーな「If There Was a Man」の3曲を歌唱曲として作曲しています。そしてそれらを、前出のように「The Living Daylights」を編曲し、ボンドをメインとしたアクションシーンに、「Where Has Everybody Gone」を編曲し、敵方を交えたアクションシーンに、「If There Was a Man」をボンドガール、カーラが絡むムーディなシーンに編曲して使用しています。
 そして、特にアクションシーンにはボンドのテーマも加わり、完成度の高い作品に仕上げており、相当、力(ちから)を入れてる感じが伝わってきます。

 ボーナストラック盤サントラで、本編の音楽はほぼ捉えられており、サントラに入ってない本編にある曲は下記の2か所だけです。
・タンジールのホテルの部屋でソ連高官にボンドが銃を向ける短い曲=すぐに「The Living Daylights」のアレンジに変わる。
・ソ連基地で輸送機にボンドが乗る短い曲=すぐに「Where Has Everybody Gone」のアレンジに変わる。


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●美しき獲物たち
 A View to a Kill の音楽について
●全15曲
●極私的アルバム評価  
★★★★★

 ●タイトルバック
 A View to a Kill 主題歌・デュラン・デュラン
  これまでのシリーズで初めてジョン・バリーが他のアーティストと組んで作曲した主題曲。後にデュラン・デュランは「いいチームワークだった」と言ったが、たとえ何かあったとしてもそう言うのが大人の対応。これでバリーは本編でも「A View to a Kill」を堂々と使える。曲中、ジャカジャンと合いの手のように入るサウンドはバリーのセンスのように思えます。
 ●挿入歌
  ギデアパークのカバーしたザ・ビーチ・ボーイズの『カリフォルニア・ガールズ』をプレアクションのスノーボードシーンに使用。せっかくのアクションシーンを中断させ失敗している。
 ●ラスト曲
 A View to a Kill 歌・デュラン・デュラン
  サンフランシスコ金門橋上空からの景色をバックにラストクレジットが終わるまで、デュラン・デュランが2番歌う。
 
●「美しき獲物たち」サントラ、作品内の曲について
 今回のこのサントラは、2000年頃のボーナストラック入り企画には入りませんでしたが、通常盤でも主要なところは押さえていて問題はありません。良い出来です。が、サントラに入っていない劇中曲にも良い曲があり、次回はぜひ、ボーナストラック入り盤の企画を実現させてほしいといころです。

 今回の成功は、バリー、オリジナルのアクションテーマを作ったことでしょう。「A View to a Kill」は、ムードあるシーンでインストメンタルで使っています。「A View to a Kill」もアクション曲にすることも可能な曲ですが、バリーはあえて旋律のしっかりしたアクションテーマを作り、プレアクションのスキーシーン、サットン邸の乱闘、消防車アクション、ラストの金門橋アクションなどに使用しています。
 ただ若干、全体的に大人しい印象があるのは、アクションテーマがメロディを主体とし、パンチを強調した曲ではないからでしょう。もし今後、ボーナストラック入り盤が出るならば、パンチが加わったサントラになります。

 サントラに入っていない劇中曲は下記の通りたくさんあります。
・Mの部屋での短い静かな曲。・競馬場からエッフェル塔への短い静かな曲。・セーヌ川の遊覧船からメイデイ逃亡の重厚な曲。・ゾリンの白に車で入場する明るい曲。・チベットが馬屋を探るミステリアスな曲。・ヘリ着陸してゾリンがステイシーに会うムードある曲。・メイデイがボンドに気づくカットからベッドシーンへの曲。・競馬で馬が暴れるシーンでの迫力ある曲。・メイデイがKGBを持ち上げる短い迫力ある曲。・ボンドが市役所からステイシーを尾行する曲。・ステイシーの屋敷でステイシーがボンドに銃を向けるシーンの曲。・ステイシーの屋敷での銃撃シーンの迫力ある曲。・地震についてボンドとステイシーが話す短い静かな曲。・市役所の火事からステイシーを助ける「A View to a Kill」を壮大にした曲。・炭鉱の追跡の壮大な曲。ステイシーを追う飛行船、「A View to a Kill」をスリリングに美しく編曲している。・飛行船が金門橋に差し掛かるシーンで「A View to a Kill」を編曲。・Qの探索ロボットのシーンの曲。

 特に「・競馬で馬が暴れるシーンでの迫力ある曲。」は聞きごたえあります。


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●ジョージ・A・ロメロ「死霊のえじき」
 George A. Romero 「Day Of The Dead」 の音楽について
●CD1・全28曲・64分、CD2・全6曲・39分
●極私的アルバム評価  
★★★★★

 ●このアルバム「死霊のえじき」について
  筆者(youon)は、公開時にこの作品のLPサントラ1枚組を所有してました。このノリの良い音楽をCDに焼いたり、ウォークマンにダウンロードしたりして聞いていました。かれこれ20年ほどあらゆる手段で聞いていたことになります。

 このたび、2枚組CDが限定発売された(2013年)とのことで、先日(2017年3月)購入しました。そして「死霊のえじき・サントラ」の良さを再確認しました。名盤です。

 CD1枚目は近年発見されたサウンドトラックであるとの記事があったので、そのつもりでしたが、現物のCD1は「サウンドトラック・スコア」とあります。いずれにしても優秀で問題ないです。2013年度作成は確かなようで、ライナーノーツに2013年付けで、ロメロとジョン・ハリソンのコメントが載っています(英文)。

 CD2は曲順は違いますがLPサントラと同じです。短調と長調が交差する各旋律、迫力のリズム、ゾンビの大群をイメージさせる世界観。このたびのCD1の新録音は、CD2のサントラの各要素それぞれをCD2の28曲に色好く散りばめた感じです。
 
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● オクトパシー 
Octopussy の音楽について
●全11曲
・ボーナストラック盤14曲
●極私的アルバム評価  
★★★

 ●タイトルバック
 オール・タイム・ハイ 主題歌・リタ・クーリッジ
  ジョン・バリー作曲、歌、リタ・クーリッジ。前作でお休みしたジョン・バリー作曲の主題歌がシリーズに戻ってまいりましたが、静かなゆったりとした曲になった。
 ●挿入歌 特になし
 ●ラスト曲
 オール・タイム・ハイ 歌・リタ・クーリッジ
  オクトパシーの船が航行する映像をバックにエンドタイトル全て、リタ・クーリッジの歌が2番まで歌われる。
 
●「オクトパシー」サントラ、作品内の曲について
 ボーナストラック入りの14曲は、通常盤より3曲多いですが、3曲は曲ではなく、映像から取ったロジャー・ムーアらのセリフです。曲としての違いは感じられません。

 今回のジョン・バリーは、一言でいうと残念ながら、曲に力がありません。全体にわたって大人しい印象です。
 曲の構成を申しましょう。まずムードあるシーンには、「オール・タイム・ハイ」のインストメンタルと、オクトパシーのテーマともとれるムーディな曲、その2曲を散りばめていて、インドのアクションシーンには、「恐怖の殺人ヨーヨー」に代表されるヒュルヒュルといった旋律の曲を当てています。「恐怖の殺人ヨーヨー」を基本としたアクションテーマは、インド風を意識してるため、後半のドイツのアクションシーンには使えず、といって、ドイツはドイツのアクションテーマがある訳ではなく、前半に出た「009の死」などの旋律を静かに使ってます。パンチの効いた曲は1曲もなく、大人しめのアルバムになっています。

 サントラになく作品内にある曲は下記の通り。
・プレアクションで倉庫爆発後、タイトルまでの短い曲。
・美術品落札後、カマル・カーンが車に乗るまでの短い曲。
・Mのオフィスからタジ・マハールでのヘリの壮大な曲(この曲は画面を充分盛り上げてる)。
・テンプーチェイスでボンドのテーマ。
・ベルリン国境の短い曲。
・ゴリラ変装から列車の上へ脱出の短いが迫力ある曲。
・ボンドが爆弾を外す短いが盛り上がる曲。
・カマル・カーンの小型機が墜落する迫力ある曲。

 上記、劇中曲がサントラに入れば、サントラの印象も違ってきますが、サントラに入らなかった曲は全部短いため、曲をまとめる再編集などが必要となってくるでしょう。

 右の写真は、ボーナストラック入り「オクトパシー」ジャケットデザイン。


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●ピンクの豹   
The Pink Panther の音楽について
●全16曲
●極私的アルバム評価  
★★★★
●このアルバムについて 
 名盤です。と申しますか、映画、劇中曲のサウンドトラックとしてではなく、スコアの『ヘンリー・マンシーニ、ムードミュージックの世界・1963年・ピンクパンサー版』としてですね。
 実際、このアルバムに収録されている曲は、全部違う曲で、1曲1曲が立っています(良く出来ているということ)。
 実際の映画に使われている曲は、テーマ曲をアレンジした曲など多様で、このアルバムにあるような単一的なものではありません。が、60年代前半のイージーリスニング曲集として捉えれば、それはそれで、名盤と言えるでしょう。
 ちなみに筆者(youon)が持ってるLP盤よりもCD盤は、下記の曲が多いです。
13. The Return Of The Pink Panther (Parts I & II)
14. The Greatest Gift (Instrumental)
15. Here's Looking At You Kid
16. Dreamy
●「ピンクの豹」タイトルバックについて
 アラビア風な宮殿の中で、宝石「ピンクパンサー」の紹介がなされ少女に宝石ピンクパンサーの首飾りをかけるところから、おなじみ(と言っても今回が初回だが)のピンクパンサーのアニメーションをバックにヘンリー・マンシーニのピンクパンサーテーマ曲がかかる。
 驚いたことにこのタイトルバックに掛かる曲は主旋律こそサントラスコアと同じだが、編曲が全然違います。アニメーションに合わせ違う旋律や効果音のように音が鳴ったりと実に多彩です。
 この曲を収録しているアルバムははたしてあるのでしょうか? 同じことが本編の音楽にも言えます。



● ユア・アイズ・オンリー 
For Your Eyes Only の音楽について
●全19曲
●極私的アルバム評価  
★★★★★
●タイトルバック 
For Your Eyes Only 主題歌・シーナ・イーストン
 ビル・コンティ作曲、歌、シーナ・イーストン。シリーズで唯一、モーリス・ビンダーがデザインしたタイトルバックに歌手そのもの(シーナ・イーストン)が登場して歌っている。主題歌はなかなか聞かせるいい曲です。
●挿入歌 特になし
●ラスト曲
For Your Eyes Only 歌・シーナ・イーストン
 インストメンタルから始まり、海中を泳ぐボンドらのシルエットの映像とエンドタイトル全てをシーナ・イーストンが2番歌う。

●「ユア・アイズ・オンリー」サントラ、作品内の曲について
 現在ボーナストラック入りの19曲盤が通常販売のようですが、ボーナストラックが入ってない旧ヴァージョンでもすでに「ユア・アイズ・オンリー」のサントラは名盤です。

 旧盤にて聞かせどころの曲はすでに全部入ってます。ボーナストラックは、旧盤に入れるまでもない劇中曲の取りこぼしをおまけに付けているといったところでしょう。
 出来上がってる旧盤の曲構成を申しましょう。まず主題歌の「For Your Eyes Only」、ラストの「For Your Eyes Only」も入ってます。そして本編ではインストメンタルでムードを上げて編曲された「For Your Eyes Only」が3曲使われますが、サントラには1曲入ってます。

 特筆すべきは、映画「ユア・アイズ・オンリー」の見せ場である4つのアクションシーン、つまりプレタイトルのヘリコプターアクション、前半のプールサイドアクション、続くシトロエンカーチェイス、中盤のスキーチェイス、これらアクションの音楽がそれぞれ独自の旋律で別々の曲としてしっかり立っている。聞かせます。これだけでも「ユア・アイズ・オンリー」のサントラは名盤とされる所以です。

 ボーナストラックでは、スキーチェイスの前触れのサスペンスシーンや終盤のロッククライミングの曲が聞かれますが、シーンを盛り上げる効果の方が強く、1曲として聞くには少々物足りません。

 今回もジョン・バリーはタッチしませんでしたが、当時のビル・コンティは「ロッキー」の大ヒットで飛ぶ鳥を落とす勢いでした。ジョン・グレンのリズミカルなアクションにピッタリとフィットし、コンティの起用は大成功でした。ただこれ1作のみだったのは、やはり御大バリーが居たからでしょうか? そこら辺は不明です。コンティのシリーズ作品も聞きたかったところです。

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● 0011ナポレオン・ソロ  
The Man From U.N.C.L.E.
の音楽について
●全24曲
●極私的アルバム評価  
★★★
●このアルバムについて 
 筆者(youon)がこのアルバムを購入したのは、2000年に入ってからで、単にジェリー・ゴールドスミスの主題曲が聞きたかったからですね。実際のところこのアルバムが何のアルバムなのかは今でもハッキリとは分かりません(検索によるとドイツ製との情報もあります)。
 ジャケットデザインや、ライナーノーツ(英文)を拾い読みすると、どうも「The Man From U.N.C.L.E.」のTV放送におけるTVサントラ2枚分を1枚にまとめた感じです。ライナーノーツには、「The Man From U.N.C.L.E.」の思い出話のようなことが書かれていて、Hugo Montenegro(ヒューゴ・モンテネグロ)の名があり、どうもこのアルバムのプロデュースをしているようです。ヒューゴ・モンテネグロという名は聞いたことがあるので検索してみると「サイレンサーシリーズ」の映画音楽を担当したりしてますね。後日詳しく分かるかもしれません。

●ラロ・シフリンなど、後の名匠が音楽を担当
 このアルバム24曲中、テーマ曲含め、ジェリー・ゴールドスミスの曲が3曲。「ブリット」「燃えよドラゴン」「ダーティー・ハリー」などの作曲家ラロ・シフリンの曲が3曲あります。後はジェラルド・フリートなどTV中心の作曲家たちが担当しています。
 アルバム自体はテーマ曲を除き、全てポップスっぽい曲作りで、特出したものはありません。気持ちよく聞き流せるといったところです。



● 電撃フリント・アタック作戦/電撃フリントGO! GO作戦
IN LIKE FLINT -- OUR MAN FLINT
の音楽について
●全28曲
●極私的アルバム評価  
★★★★★
●このアルバムについて 
 このアルバムには、「電撃フリント・アタック作戦」と「電撃フリントGO! GO作戦」の2作品の曲が入ってます。曲順は、「電撃フリント・アタック作戦」、「電撃フリントGO! GO作戦」の順ですが、実際の製作公開年度は逆で、「電撃フリントGO! GO作戦」が1966年、「電撃フリント・アタック作戦」が、1967年で、両方ともジェリー・ゴールドスミスの作品です。
●電撃フリントGO! GO作戦・タイトルバック曲
 タイトルバック曲は「Our Man Flint」。タイトルバック映像は裸の女体が躍る、まるで「007シリーズ」の2番煎じでいささか安っぽい。曲自体はインストメンタルのノリノリです。
●電撃フリントGO! GO作戦・ラスト曲
 基地が爆発し、フリントが女性に囲まれる映像をバックにエンドタイトルまで、「EndTitles」の演奏です。オープニングの曲を基本に壮大にアレンジしています。

●「電撃フリント・アタック作戦/電撃フリントGO! GO作戦」サントラ、作品内の曲について
 ジェリー・ゴールドスミスが、37,8才の頃の作品ですね。後年のフルオーケストラの壮大な作風はまだ出ていませんが、この「電撃フリント・アタック作戦/電撃フリントGO! GO作戦」の後、「猿の惑星」の斬新さで一躍注目を集めます。

 サントラの曲順に述べましょう。「電撃フリント・アタック作戦」はお色気満載の半ばお気楽スパイ映画でしたから、音楽も一貫して明るくとぼけた雰囲気を醸し出しています。

 テーマ曲の「IN LIKE FLINT」を主軸として、ジャズ風、ムード風、ルンバ風、チャチャチャ風、ロシア風とバラエティに富み、時折、前作の「OUR MAN FLINT」のテーマも織り込んでいます。が、「電撃フリント・アタック作戦」だけでは特出するものはなく、これだけでしたら、「●極私的アルバム評価」は、★★★ですね。

 「電撃フリントGO! GO作戦」の方は、007を意識してると思われ、気合が入ったテーマ曲、「OUR MAN FLINT」とそれを随所に入れ込んだ曲構成、こちらもジャズ風、ポップ風、ムード風とバラエティに富み見事です。

 「You're aFoolish Man, Mr.Flint」などは、テーマ曲にも代われる名曲でしょう。

*********

 現在メインに発売中のサントラは上記のデザイン(「アタック作戦」のデザイン)ですが、筆者(youon)が購入したのは、「アタック作戦」と「GO! GO作戦」が上下にデザインされた紙パッケージでした。曲目は現在と同じです。
(右写真参照)。

 ちなみにLPレコードは、「アタック作戦」と「GO! GO作戦」は別々の盤でした。筆者(youon)が買ったのは「GO! GO作戦」だけでしたが・・。(左写真参照)。


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● ムーンレイカー 
Moonraker の音楽について
●全10曲
●極私的アルバム評価  
★★★★★
 ●タイトルバック
 Moonraker 主題歌・シャーリー・バッシー
  前回お休みしたジョン・バリーが主題歌作曲に返り咲き、お気に入りのシャーリー・バッシーがシリーズ3度目(「サンダーボール」を入れれば4度目)の登板。この主題歌は、本編でインストメンタルとなってムードあるシーンに使われる。
 ●挿入歌
  「荒野の七人」のインストメンタル演奏。エルマー・バーステインのオリジナル音源ではなく、バリーがオリジナルに忠実に演奏したものと思われます。
 ●ラスト曲
 Moonraker 歌・シャーリー・バッシー
  当時の世相を反映させたのか、「Moonraker」をディスコ調に編曲されたものをシャーリー・バッシーが歌う。

●「ムーンレイカー」サントラ、作品内の曲について
 この「ムーンレイカー」は、2000年時代のボーナストラック追加盤のリストには入らなかったが、このサントラ盤に入ってない本編には、聞かせる曲が多くあります。それらは後述として、この10曲のサントラ盤自体ですでにジョン・バリー節満開の名盤です。
 このサントラ盤では主に後半の宇宙関連の曲が中心となっていて、バリーの重厚な曲を聞くことができます。

 主題歌の「ムーンレイカー」は、ムードあるシーンでインストメンタルで使用され、アクションシーンには登場しません。ボートチェイスアクションには、ムーア作品で唯一使用された「007」が流れます。サントラで聞くとゆったりとした編曲でそれなりに聞かせますが、本編ではフェイドイン、フェイドアウトといった曲編集をしており、パンチを効かせると言うよりも、シーン自体を優雅な雰囲気にしています(それが良いといった見方もできるでしょう)。

 サントラ盤に入らず、本編で聞かれる曲は以下の通り。
・プレアクションでのスカイダイビング、ボンドのテーマと一連の曲(この曲はボンドミュージック再演奏の「Bond Back In Action 2」に収録された)。
・ベニスのゴンドラアクションでのボンドのテーマが優雅に編曲され流れる。
・リオ到着時、女性コーラスによる「ムーンレイカー」の曲。楽しそうな雰囲気を醸し出している。
・滝からボンドがボートからスカイカイトで脱出する曲。
・スペースシャトル噴射口からボンドらが脱出する荘厳な曲。
・他、宇宙シーンでの短い曲(サントラの曲の前奏的な意味合い)。

 今作「ムーンレイカー」の本編での曲構成は、曲自体が良いので本編を盛り上げてはいるが、「女王陛下」や「ダイヤ」とは違い、一歩身を引いたような感じもします。それは「007」をスローであまり主張しないことや、ラスト近くの宇宙ステーションでのアクションでボンドのテーマや「007」を使用せず、音楽自体を入れなかったこと。ジョーズと少女が抱き合うスローモーションのシーンも既成のムード音楽を使用したり(オリジナル作曲ではない)など多少の疑問点が残ります。が、ドーベルマンに追われ森林を逃げるコリンが襲われるシーンは音楽が合いまった名シーンでしょう。


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● 私を愛したスパイ 
The Spy Who Loved Me
の音楽について
●全11曲
●極私的アルバム評価  
★★★
●タイトルバック 
私を愛したスパイ(NOBODY DOSE IT BETTER) 主題歌・カーリー・サイモン
 内情は詳しく分からないが、「死ぬのは奴らだ」に続き一つ飛びで、今回もジョン・バリータッチせず、主題歌も劇中曲も当時売れっ子だった『追憶』などのマーヴィン・ハムリッシュが担当している。
 「NOBODY DOSE IT BETTER(誰よりも上手くやれる)」と歌われる「私を愛したスパイ」の主題曲は、見事なメロディラインの魅せる曲で。ジェームズ・ボンドのソフト面でのイメージソングに使われることも多い。
●挿入歌 特になし
●ラスト曲
私を愛したスパイ(NOBODY DOSE IT BETTER)  歌・男性コーラス、カーリー・サイモン
 軍艦航行の映像をバックにエンドタイトル。始めは男性コーラスによるマーチ風の「NOBODY DOSE IT BETTER」。それに被さるようにカーリー・サイモンの「NOBODY DOSE IT BETTER」が1番だけ歌われ、途中でフェイドアウトする。男性コーラスはサントラに入っていません。

●「私を愛したスパイ」サントラ、作品内の曲について
 マーヴィン・ハムリッシュはいくつもの映画音楽を担当していますが、基本的にムーディーな、主題歌とか歌唱曲とかを作るに力を発揮する作曲家なのではないかと思います。現に「私を愛したスパイ(NOBODY DOSE IT BETTER)」は名曲になっている。

 本作「私を愛したスパイ」サントラは、2000年当時のボーナストラック盤セールにリストアップされませんでしたが、されたとしてもこれといった曲は付け加えられることはなかったでしょう。
 唯一残念なのは映画中盤のバイクチェイスで「ボンド'77」をアレンジした「ボン!ボン!ボン!ボン!」といったアクションテーマがサントラに入らなかったことです。

 サントラに入ってる劇中曲も、サントラに入ってない劇中曲も「ジャーーン」とか「ドンドコドンドン」とかいまいち気合の入ってない曲ばかりですので劇中曲でシーンを楽しむには物足りないものがあります。
 当時のディスコブームの影響か、リズミカルな「ボンド'77」がノリが良く、聞かせます。

 映画作品中にボンドがアラブ衣装でラクダに乗り歩くシーンには、劇場公開時、確か「アラビアのロレンス」の音楽がのったと記憶していますが、今回見直してみて、DVDにもビデオにも放送にもそのシーンはあっても音楽無しですね。筆者(youon)の記憶違いか、著作権関係で二次使用を避けたかと思われます。


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● 黄金銃を持つ男 
The Man with the Golden Gun
の音楽について
●全12曲
●極私的アルバム評価  
★★★
●タイトルバック 
 The Man with the Golden Gun 主題歌・ルル
 ジョン・バリー作曲。シリーズ通してムーディな曲が多い中、この「The Man with the Golden Gun」は、パンチを効かせた部分とムーディーな部分を併せ持った名曲。ルルの歌声も聞かせる。サントラと本編の同曲は、演奏構成とルルの歌い方が若干違うような感じがします。
●挿入歌 特になし
●ラスト曲
The Man with the Golden Gun  歌・ルル
 帆船が航行する映像をバックに、ボンドの「グッナイト、サー」のセリフとボンドガールのグッドナイトの名に被せて、ルルが「グッナイ〜グッナイ〜」とタイトルの時とはややスローで歌い始める「The Man with the Golden Gun」。歌詞もエンドタイトル用のオリジナルで1番だけ歌われる。聞かせます。名曲。サントラに入ってます。

●「黄金銃を持つ男」サントラ、作品内の曲について
 前作「死ぬのは奴らだ」でお休みしたジョン・バリーが戻ってきましたが、なんともまあ、一体どうしちゃったんでしょうかという出来栄え。まあ、本編があの状態ですから、気が乗らなかったのか、曲を付けにくかったのか何なのか? バリー本人もドキュメンタリで「(360度回転シーンは)もっといい曲を付けてやればよかった」と言っているように、全体的に曲に気迫がない。「ダイヤモンドは永遠に」の時とは大違いです。

 特に、”こりゃマズいだろう”と思わせるのは、この作品の最大(唯一?)の見せ場であろうカーチェイスで、360度、車が回転するシーンに縦笛で「ピ〜ヨ、ピ〜ヨ」という音楽と言うか効果音を付けて、命がけシーンそのものを滑稽にしてしまったこと。上記のようにバリー本人が反省しているが、作品に対しての愛情が感じられません、

主題歌・ルル
 基本的に作品全体を、「ボンドのテーマのストリングス演奏」と「The Man with the Golden Gun」のパンチの効いた旋律をストリングスで、ムードある部分をストリングスやフルートなどで演奏している。

 オープニング、ロジャーに合わせたのか、ガンバレルがストリングスで上品、そのままスカラマンガの海岸のシーンの音楽につながりなかなかお洒落です。
 独自の旋律であるベイルートの格闘シーンのアクション音楽は、同音階の繰り返しでいささか安っぽい。このシーンだけの曲ですね。今回のアクションテーマは、「The Man with the Golden Gun」のアレンジで全部済ませちゃったような感じです。

 下記、サントラに無い、本編で聞かれる曲。
・マカオが登場するシーンでボンドのテーマが東洋風にアレンジされる。
・マカオの銃砲店でのスリリングな音楽。
・マカオのカジノ店での音楽もサントラにはない。
・アンドレア(モード・アダムス)のシャワーシーンでのムードある音楽。
・香港ネオン街で狙撃シーンの音楽もサントラにはない。
・ソレックス・アジテーターを取り出すシーンの音楽(この曲が一番壮大)。

 2000年代初頭のボンドサントラ、ボーナストラック入り販売リストに今作「黄金銃を持つ男」は入りませんでした。もし入ったとしたらボーナストラックは上記の6曲になりますが、アルバムの印象はさほど変わらないと思います。

●2021年追記。
youtubeに完全版と思われる動画がありました。
聞き直すと旋律が美しい。
バリーはしっかり仕事しています。
この動画はいつまでアップされているかは不明です。

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● 死ぬのは奴らだ 
 Live And Let Die
の音楽について
●全14曲
ボーナストラック入り盤、全22曲
●極私的アルバム評価  
★★★★
●タイトルバック 
 Live And Let Die  主題歌・ポール・マッカートニー&ウイングス
 これまでのシリーズで、初めてジョン・バリーがタッチしなかった主題歌。曲は上出来。ジョージ・マーチンを始め、元ビートルズ関係者の仕事で大英帝国のメンツも立った。ポピュラーソングとしても今(21世紀)でも歌える曲になっている。
●挿入歌
 Live And Let Die 歌・B.J アーノウ
 ボンドが訪れるバー、テーブルの前のステージで黒人歌手が「Live And Let Die」とボンドに突きつけるようにシャウトすると、ボンドのテーブルが地下に下がる。フィリックス・レイターが、テーブルに戻っても歌は続くが、別シーンに変わる。
●ラスト曲
Live And Let Die  ポール・マッカートニー&ウイングス
 モーリス・ビンダーデザインのエンドタイトルに歌で曲の1番がまるまる歌われる。このヴァージョンはどのサントラにも入ってはいません。

●「死ぬのは奴らだ」サントラについて
 これまでのシリーズ初めてジョン・バリーが担当しなかった作品。先にポールの起用が決まり、ポールの紹介で、”5人目のビートルズ”の異名を持つスタジオマン、ジョージ・マーティンが出てきたのだろうと、ズッと思っておりましたが、後のドキュメンタリーなどの「サンダーボール作戦」(66年)の話あたりで、ジョージ・マーティンの名は出てきますね。スタジオ作業とかで前々からイオンプロはジョージ・マーティンと繋がりがあったと推測されます。

 サントラの通常盤とボーナストラック盤との違いは、曲数の違いもさることながら、「ジェームズ・ボンドのテーマ」が、通常盤とボーナストラック盤とでは違います。ボーナストラック盤の方が映画で流れている曲に近く、イントロ部分が長いです。通常盤の「ジェームズ・ボンドのテーマ」は、ノーマンの「ジェームズ・ボンドのテーマ」をジョージ・マーティン仕様にしたといった感じです。このジョージ・マーティン版「ジェームズ・ボンドのテーマ」は、後のシリーズ作品の予告編に使用されたと認識しています。

 著作権の都合があったのか、通常盤には「Live And Let Die」の間奏曲部分に当たるアクションをイメージした音楽が一切入れられていませんでしたが、ボーナストラック盤には、アクション部分に「Live And Let Die」の曲が入り、映画本編のすべての音楽を押さえています。

 ジョージ・マーティンの曲は、バリー、その後の他の作曲家に比べても新鮮に聞こえます。最高とは言いませんが、好印象です。


●「死ぬのは奴らだ」作品内の曲について
 ジョージ・マーティンの曲はとにかく明るいです。まあ本編自体がとぼけた明るさがあるためか、サスペンスを盛り上げるべきシーンでも、それなりの曲を付けてはいるが、明るい。

 まあ明るいのは結構で、それなりに聞かせ、場面を盛り上げてはいますが、「ここで音楽は必要でしょう!?」と思われるところで音楽が無い。ジョージ・マーティンが映画音楽に慣れていなかったのか、それともクライマックスだけに曲を付ける主義だったのか、飛行場シーン、二階建てバスシーン、ボートチェイスシーン、全て前半には曲はつかず、ハミルトンの間抜けアクション演出が誤魔化せなくなっている。ちなみに同監督の「ダイヤ」では、間抜けアクションでもバリーの曲は聞かせ(効かせ)てました。

 「ジェームズ・ボンドのテーマ」は前半のニューヨークのシーンで長めに聞かれます。


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